TPP11の今年12月30日の発効が決定しました。これにより、著作権の保護期間がこれまでの50年から70年へと延長される法律も12月30日に有効になります。
そのため、2018年からは当分の間、新たに著作権が切れて、「青空文庫」に作品が追加されることはなくなります。
これを音楽の世界で見てみますと、これまで著作権(作曲家の死後50年)および、著作隣接権(発行後50年)が切れていたため無料、あるいは安価にネット配布やCD販売されていたクラシック音源、また、著作権処理だけで安価に販売されていたロック、ポップス、ジャズの録音などに影響が出ることが予想されます。
個人的にも国内の某有名クラシック音源無料配布サイトには大変お世話になっているので、これからのことが気がかりです。
クラシック音楽のステレオ初期の録音には演奏、録音ともに大変素晴らしいものが大量にあります。しかもこれらの音源のCD同等FLACファイルが無料配布されているのです。かつて同じCDを1枚2~3000円で買っていた身からすると涙ものではありますが、それらはオーディオに親しんでいるけれども、クラシックはあまり聞いたことがないという人には大いにおすすめできます。
今回の著作権延長により、これまでに著作権が切れている1967年発売までの音源は従来通り切れたままになりますが(移行措置の原則により、一度著作権が切れた作品が再度保護されることはありません)、新規の音源追加は困難になります。そのことが原因で無料配布サイトが運営できなくなることはあって欲しくありません。
なお、クラシック音源については、EUに著作隣接権がある録音の場合、EUの保護期間は50年のため、著作権の「相互主義」の原則によって、日本国内でも今後も新規に公開できる可能性はあります。しかし、たとえば、アメリカに権利のある録音(RCAや旧コロンビア)についてはダメです。グールド、ルービンシュタイン、ホロヴィッツ、バーンスタイン、ブーレーズなどの1968年以降のアメリカ録音を無料で入手できるチャンスは無くなりました…。
追記:某有名クラシック音源無料配布サイトとして上記で紹介しているサイトの管理人さんが、文化庁にEUに著作隣接権がある録音を著作権の「相互主義」の原則でとらえてよいのか質問されました。その結果、残念ながら、文化庁の見解としては著作隣接権は「相互主義」の原則がはたらく著作権として明記されていないため、EUの著作隣接権50年の保護は日本では無効ということになるそうです。
これには異論もあるような見解ですが、現時点ではこの見解に従うしかありません。
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